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「破産者マップ」類似サイトに停止命令 終わらぬ「いたちごっこ」、今後の対策は?
2020年08月15日 09時32分

破産した人の名前や住所などを掲載するウェブサイトが話題になっている。政府の個人情報保護委員会が掲載する2事業者に停止命令を出したためだ。タイムリミットは8月27日で、対応に注目が集まっている。

破産者の名前・住所は官報に掲載されているが、同委員会は、「個人情報取得時に利用目的を通知・公表しなかった」、「同意を得ず、個人情報をウェブサイトに掲載した」ことが個人情報保護法違反であるとし、当該ウェブサイトを直ちに停止するよう命じた。

事業者側が具体的な対応をしない場合、同委員会は刑事告発する方針を示している。

破産した人の名前や住所などを掲載するウェブサイトが話題になっている。政府の個人情報保護委員会が掲載する2事業者に停止命令を出したためだ。タイムリミットは8月27日で、対応に注目が集まっている。

破産者の名前・住所は官報に掲載されているが、同委員会は、「個人情報取得時に利用目的を通知・公表しなかった」、「同意を得ず、個人情報をウェブサイトに掲載した」ことが個人情報保護法違反であるとし、当該ウェブサイトを直ちに停止するよう命じた。

事業者側が具体的な対応をしない場合、同委員会は刑事告発する方針を示している。

●破産者情報のウェブサイト掲載、再び

破産者の個人情報をめぐっては、2019年に破産者情報をGoogleマップで可視化した「破産者マップ」が出現。プライバシー侵害の懸念が指摘され、対策弁護団が結成されるなど問題となった。

個人情報保護委員会は当時、「破産者マップ」に対し、上記同様の違反のおそれがあるとして行政指導を実施。その後まもなく、サイトが閉鎖されたため、今回のような停止命令には至らなかった。

ところが、その後に類似のウェブサイトが出現。同委員会は、ウェブサイトを直ちに停止し、必要な対応をとるまで再開してはならないと勧告したものの、期限までに措置が講じられなかったとして、停止命令に踏み切った。

停止命令が出ても、事業者側が従わない場合はどうなるのか。また、類似サイトが後から作られる「いたちごっこ」の状況をどう解消すべきなのか。金田万作弁護士に聞いた。

●停止命令に従わなければ、懲役刑になる可能性も

ーー「勧告」や「停止命令」とはどのようなものでしょうか

「個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者等に対し、違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を勧告することができます(個人情報保護法42条1項)。

また、同勧告を受けたのに当該事業者等が、正当な理由なく措置をとらない場合、一定の条件下で停止命令を出すことができます(同条2項)。

今回の停止命令も、中止の措置として、ウェブサイトの停止を命じたものです」

ーー停止命令の実効性はどれほどのものでしょうか

「公示送達による勧告及び命令ですが、類似のウェブサイト側は当該命令を認識しているようなので、命令の対応期限(8月27日)までにウェブサイトを閉鎖する可能性が高いです(15日9時現在、2事業者のうち、片方は閉鎖済みとみられる)」

ーー命令に従わない場合、どうなりますか

「ウェブサイトを閉鎖せず命令に従わない場合については、罰則(「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金」)が定められていますので(個人情報保護法84条)、個人情報保護委員会が刑事告発をし、警察がウェブサイトの運営者への捜査を行うことになると思われます。

一方、ウェブサイトが閉鎖されれば、命令に従ったものとして、個人情報保護委員会としてはそれ以上の対応は行わないものと思われます」

ーー個人情報保護法違反以外の法的責任はありますか

「過去の破産者等の住所や氏名を広くインターネットで公開しており、名誉毀損やプライバシー侵害として、民事上の不法行為責任を負う可能性は高いと考えます」

●技術的措置や法改正による措置で対策を

ーー類似サイトが後から作られるという状況です。今後、どのような対策が必要でしょうか

「日弁連なども意見書を出していますが、まずは、容易に過去の破産者等の情報を取得されないようにすべきです。

おそらく、これまでのこの種のウェブサイトではインターネット版官報を利用して情報を取得しているものと思われますので、有料無料を問わずインターネット版官報の情報をプログラム等により自動取得することができないよう技術的措置が求められます(無料版では既に画像データ化されているようです)。

併せて、法改正が必要になりますが、過去の破産等の情報を「要配慮個人情報」として定め、情報の取得や公開を違法にすることで事前の抑止を図るとともに、個人情報保護委員会がより積極的に監督行使できるようにするといった方法は考えられます。

また、破産法における公告を官報に掲載するという現在の方法を変更して、一定期間経過後の破産等の情報の拡散を防ぐ方法で公告を行うなどの方法も模索すべきです」

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