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座間9遺体事件、死因特定難しく、捜査難航の可能性も 裁判が開かれるのはいつごろ?
2017年12月03日 09時42分

神奈川県座間市のアパートから9人の遺体が見つかった事件で、警視庁は11月20日、八王子市の女性を殺害した容疑で、容疑者の男性を再逮捕した。

報道によると、男性は10月31日に死体遺棄容疑での逮捕直後、9人全員の殺害を認めている。一方で、死因の特定が難しく、捜査にはかなりの時間が必要な見込みだという。

捜査機関は、すべてを殺人事件として立件するため、可能な限り時間が欲しいところ。今後も小まめに再逮捕していくことが考えられる。さらに精神鑑定などが入ってくる可能性もある。

今後、裁判になるとしたら、開始までにどのくらいの期間がかかると考えられるだろうか。元検事の荒木樹弁護士に聞いた。

神奈川県座間市のアパートから9人の遺体が見つかった事件で、警視庁は11月20日、八王子市の女性を殺害した容疑で、容疑者の男性を再逮捕した。

報道によると、男性は10月31日に死体遺棄容疑での逮捕直後、9人全員の殺害を認めている。一方で、死因の特定が難しく、捜査にはかなりの時間が必要な見込みだという。

捜査機関は、すべてを殺人事件として立件するため、可能な限り時間が欲しいところ。今後も小まめに再逮捕していくことが考えられる。さらに精神鑑定などが入ってくる可能性もある。

今後、裁判になるとしたら、開始までにどのくらいの期間がかかると考えられるだろうか。元検事の荒木樹弁護士に聞いた。

●理論上は、残る8人分の殺人や死体遺棄容疑でそれぞれ再逮捕できる

荒木弁護士によると、仮に裁判になるとしたら、裁判以前に起訴まで1年以上かかる可能性があるという。ポイントは勾留期間だ。

「刑事事件の身柄拘束時間については、厳格な制限があります(刑事訴訟法)。警察は逮捕後48時間以内に検察官に身柄を送致する必要があり、検察官は、身柄を受け取ったあと、24時間以内に、裁判官に勾留を請求する必要があります。

勾留が認められた場合には、原則10日間の身柄拘束が認められ、さらに必要な場合には、10日間の延長が認められる場合があります」

逮捕後、23日(3日+20日)以内に起訴するかどうかが判断されるということだ。今回、容疑者は10月31日に逮捕され、11月20日に再逮捕されている。逮捕・勾留の流れに当てはめるとどうなるのだろうか。

「今回の場合、10月31日の逮捕後、11月1日に立川簡裁から勾留決定が出ています。20日間の勾留期間一杯に身柄拘束をしたあと、一旦、処分保留で釈放し、殺人容疑で再逮捕したこととなっています。

死体遺棄罪を処分保留で釈放した理由は、今後、精神鑑定などが予想され、精神鑑定の結果を待たなければ、起訴するかどうかを判断できないからであると思われます」

そうなると、殺人容疑で残り8回再逮捕されることもあり得るのだろうか。

「逮捕・勾留の時間制限は、事件単位で数えますので、理論上は9人の被害者について、それぞれ、死体遺棄罪と殺人罪で、逮捕・勾留を繰り返すことが可能です。

動機は供述していないようですが、殺害事実は認めているようですので、それぞれについて、殺害方法・死体遺棄方法の詳細を聴取する必要があり、それぞれについて、20日間の最大限の勾留延長が認められる可能性が高いと思われます。

もちろん、無条件に逮捕・勾留が認められるものではなく、通常は捜査上の必要性がある限度で認められます。しかし、本件の場合、それぞれについて、尊い人命が失われた重大事件であること、犯行の日時・方法が被害者ごとに異なっていることなどから、各被害者の殺害状況・死体遺棄状況を個別に特定するためにも慎重な捜査が必要であり、容易に捜査が遂げられるとは思われません。

同種犯行を重ねる事件、例えば、窃盗事件などでは、余罪が数百件の犯行であっても、数件を立件して、他の事件は立件せずに情状として考慮する、ということもあります。しかし、本件の場合は、そのような手法をとることは考えられません」

捜査の進展次第だが、単純に20日×9人で計算しても180日になる計算だ。しかも精神鑑定が加われば、さらに期間は延びるという。

「9人の被害者について、逮捕・勾留・処分保留釈放を繰り返した後、最終段階で、精神鑑定に付されるのではないかと思います。精神鑑定の期間は、通常3か月程度はかかると思われます。精神鑑定の実施は捜査の最終段階であり、犯行日時・手口・状況など、必要な捜査が遂げられた上で行われます。

このように見通していくと、捜査を遂げて被疑者を起訴するまでには、1年以上要する可能性もあるのではないかと思います。

一見長いように思われますが、例えば、複数の都道府県にまたがる連続窃盗事件であれば、10件程度の立件のために、1年以上の時間を要する場合もあります。本件の事案の重大性を考えると、特に長い時間を要している訳ではないと思います」

荒木弁護士はこのように説明していた。なお、裁判員裁判になると、事前に争点などを絞り込む「公判前整理手続」に平均で8.2か月(2016年)かかる。最長で4年近くになったものもあり、初公判まで数年かかる可能性もありそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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