この事例の依頼主
60代 男性
当初、私の所に来た依頼者(兄・60代)は、亡くなった父親の遺産である実家の土地・建物を取得することを望んでおり、弟に対し、遺産分割の協議をして欲しいという申入れをしました(依頼者は、父親と同居をしておりました。)。しかし、兄と弟の間で昔からひきづっている感情的な対立がありました。依頼者(兄)としては、遺産分割を早く進めたかったのですが、弟が素直に応じることはなく、遺産分割協議を始めることが出来ませんでした。他にも兄弟(一番下の弟)がいましたが、その方は協力的だったので、問題は真ん中の兄弟でした。このままだと何も前に進まないと考えて、第三者に間に入ってもらう必要があると考えて、依頼者(兄)が当職のところに無料法律相談ということで相談に来ました。
無料法律相談後、当職が受任をするということになり、まず、手初めに、兄の代理人として弟に対し、弁護士名で遺産分割協議の申し入れをいたしました。ところが、弟からの返答はいつまで経ってもありませんでした。そこで、家庭裁判所の下で話合いをする必要があると考え、遺産分割調停の申立てを行いました。そうしたところ、遺産分割調停の申立てがなされたことを知った一番下の弟から、トラブルには巻き込まれたくないので、調停をしたくない旨の連絡がありました。そこで、依頼者(兄)に相続分を譲渡して上で、調停から脱退する手続を取ることを当職から提案をさせて頂きました。そうしたところ、一番下の弟からは法定相続分よりも遙かに少ない金額を支払うことで、依頼者(兄)に対して彼の相続分を譲渡することに応じてもらうことができました。残ったの真ん中の弟との調停では、両者の主張が平行線を辿りました。期日を重ね話し合いは難航しましたが、話合いがまとまらず、強制的な解決の手段である「審判」に移行してしまうと、双方が望んでいない形で遺産が分割がなされてしまう可能性が生じました。そのため、兄と弟がお互いに譲歩をし、依頼者(兄)が、弟に対し、法定相続分相当額の半額程度の金銭を支払うことで調停が成立することができました。依頼者(兄)は、一定の譲歩をいたしましたが、結果的には、自分の法定相続分以上の遺産を取得することができました。
遺産分割をする場合には、兄弟間の感情的な対立が大きく、スムーズに遺産分割協議を進めることができないケースは多いと言わざるを得ません。そのような場合には、本人同士で話を続けていても、話が前に進むことは望めませんと思います。そのまま放置していたのでは、最終的な解決が遅れることになりますので、話合いの行き詰まりを感じた場合には、弁護士に相談をし、場合によっては、裁判所の調停手続を利用することを検討してみて下さい。調停は話合いの手続きですので、柔軟な解決をすることが可能です。また、弁護士に相談をすれば複雑な問題を一つ一つ解きほぐして解決に導いてくれるかと思われます。お近くの法律事務所にご相談に行かれることをお勧め致します。